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映画館で観るジブリ映画の魅力とは?旧作なのにトップ独占

コラム

夏はジブリ『千と千尋の神隠し』より
夏はジブリ『千と千尋の神隠し』より - Studio Ghibli / Disney / Photofest / ゲッティ イメージズ

 6月26日から再上映されているスタジオジブリ4作品が、好成績を記録している。『千と千尋の神隠し』(2001)、『もののけ姫』(1997)、『風の谷のナウシカ』(1984)は、作品の並び順に、いずれも全国映画動員ランキングにおいて2週連続でトップ3を独占。残る1本の『ゲド戦記』(2006)も初登場9位から翌週には8位にランキングを上げた。なぜ今、ジブリ映画に人気が集まっているのだろうか。(文:金澤誠)

トップ独占『もののけ姫』フォトギャラリー

 ひとつには、ジブリ映画を映画館で観たことがない若い世代が増えていること。一番新しい『ゲド戦記』ですら公開は14年前で、スタジオジブリ誕生の礎を作った『風の谷のナウシカ』は、すでに公開から36年が経っている。若い世代はDVDなどのソフトか、 「金曜ロードSHOW!」(「金曜ロードショー」時代含む)などのテレビ番組でジブリ映画と出会っているわけで、一度劇場で観てみたいという欲求があったことが大きい。『千と千尋の神隠し』は2016年に開催された「スタジオジブリ総選挙」で第1位になった際に全国5館で再上映されているが、今回は全国370館を超える規模で、ジブリ映画の中でも人気作がより支持を集める結果にもなった。

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 またファンの数の多さも人気の要因だ。『もののけ姫』は初公開時、日本映画の興行記録を塗り替える興行収入193億円(興行通信社調べ)の大ヒット。『千と千尋の神隠し』は、さらにそれを超える308億円の興収をたたき出し、この記録は今も破られていない。まだ宮崎駿監督の名前が一般的ではなかった『風の谷のナウシカ』は、配給収入7億4,000万円で大ヒットにはならなかったが、その後何度もテレビ放映され、高視聴率を獲得した。『ゲド戦記』の興収は76億9,000万円で、その年の邦画第1位のヒットになった。つまり初公開時の観客を含め、2世代、3世代にわたって多くのファン層が形成されてきたわけで、その人たちが劇場の足を運んだ結果でもある。

 またスタジオジブリの方々は、自分たちの作品を“アニメーション”ではなく“映画”と呼ぶが、ジブリ作品には、劇場でしか味わえない緻密な描写や壮大なスケール感が満載されている。『もののけ姫』に登場する、シシ神の森の密生した自然の雄大さ。『千と千尋の神隠し』で姿を変えながら油屋の中を暴れまわるカオナシの躍動感。『風の谷のナウシカ』でメーヴェに乗って空を飛ぶナウシカの飛翔感。その圧倒的な描写力がもたらす映像は、劇場の大スクリーンでこそ魅力が存分に味わえる。テレビ放映で作品を知った人々が、この機会に作り手が伝えたかった100%のジブリ映画の面白さを、体感してみたいと思ったのも人気の要因だろう。

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 もう一つ観客は無意識に、今こそ作品のテーマに触れ直してみたいと感じたのではないか。自然と人間との共生をサンとアシタカを中心に描いた。『もののけ姫』や、腐敗した自然を再生させる道を探る少女を描いた『風の谷のナウシカ』。本名を失った少女と、自分のアイデンティティを無くしたカオナシの触れ合いによって、“自分”を見つめ直す者たちの冒険を描いた『千と千尋の神隠し』。そして世界に異変を起こす、目に見えぬ災いの根源を探るアレンとハイタカの旅を描く『ゲド戦記』。いずれも新型コロナウイルスという未知の感染症の拡大によって、今の地球で生きることが試されている人々に疑問を投げかけ、生きる力を与えるテーマを持った作品ばかりだ。極論すればジブリの作品は時代を超えて今の映画であり続ける。だからこそ常に新しいのだ。

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