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新人&ベテラン、監督業でのポリシーは?~鈴木卓爾監督&工藤梨穂監督~

若手女性監督に密着!

シネマトゥデイ×ぴあフィルムフェスティバル連動企画連載(第5回)

 2018年のぴあフィルムフェスティバルで529本の応募作品の中からグランプリに輝いた工藤梨穂監督の『オーファンズ・ブルース』が、5月31日よりテアトル新宿で公開されることが決定しました! 同時期に同映画館で上映される『嵐電』の鈴木卓爾監督と工藤監督は、先生と生徒の関係ということで、ベテラン&新人監督のお二人に監督業について直撃取材してきました。(取材・文:森田真帆)

先生と生徒の関係の二人

先生と生徒でありながら、フレンドリーな間柄のお二人!

 映画『オーファンズ・ブルース』は、工藤監督の母校である京都造形芸術大学映画学科の2017年度の卒業制作作品。今回のように卒業制作の作品が一般でロードショー公開されることは同大学の映画学科では初めての快挙なのだそう。そして、京都造形芸術大学で教鞭を執る鈴木監督と工藤監督は先生と卒業生の関係なのです! 

工藤:大学に入る前から鈴木さんのことは俳優さんとして知っていて、最初にお見かけした時は「あ、園子温監督の『うつしみ』に出てた人だ!」と思って。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』のときはサイコパス役を演じられていて、その印象もありすごく怖かったんです(笑)。でも、卒業制作の企画プレゼンがうまくいかなかった時に、とても親身になって相談に乗っていただきました。

鈴木:工藤さんはもともと青山真治監督のゼミの生徒で、僕は俳優のコースの子たちを教えていたから、実は卒業制作の話を聞くまで名前くらいしか知らなかったんです。でも、あの企画をプレゼンしたときにすごく面白かったんです。内容自体は規格外で映画にならないものだけど、彼女には当時も周りを巻き込むパワーがあったんです。非常にいいと思っていて本当は担当したかったんだけど、ほかの先生に取られちゃったんだよ。残念だった!

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鈴木監督からの助言を受けワークショップを開催

『オーファンズ・ブルース』場面写真より 

 『オーファンズ・ブルース』に出演している俳優たちは、そのほとんどが京都造形芸術大学映画学科の学生たち。PFFの授賞式で、最終審査員を務めた俳優の生田斗真が「主演の村上由規乃さんをはじめ、俳優陣のお芝居も本当に素晴らしいものだったと思いますし、今でも頭の中に主人公たちが生きているような感覚がしています」と絶賛したほど。

工藤:鈴木先生に相談していた時、まだ映画の脚本はできていなかったんですが先生から「同時進行でいいから、ワークショップをやってみたら?」ってアイデアをくださったんです。

鈴木:確か、日常的に学校に俳優がいるんだから、みんなに動いてもらって何かを見つけることができるんじゃないかって話していたんだよね。だったら撮影前にワークショップでもやってみると新しい発見があるかもしれないよって。『嵐電』にも何人かうちの大学の子が出ているんだけど、ワークショップをみっちりやったんだよね。

工藤:ワークショップでは、まず私が書いた脚本を基盤に芝居をしてもらって、そこからいろいろなパターンを見たりアイデアを出したりしながら、実際の脚本に反映させました。

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監督としてそれぞれのポリシー

『嵐電』場面写真より (C) Migrant Birds / OMURO / Kyoto University of Art and Design

 「ちょうど卒業生の活躍取材でね」と話しながら、工藤監督の写真を撮りまくる鈴木監督はまるで父親のよう。自身がPFFの審査員特別賞を取った時のことを「あのときは表彰式で大島渚監督がプレゼンターだったのに、オレはコートに手を突っ込んだままでカッコつけてね。最悪だったよ」と振り返りながら、工藤監督と笑い合う姿からは年代を超えた監督同士の仲の良さが伝わってきた。監督として、二人が大事にしていることとは?

鈴木:『オーファンズ・ブルース』には、日本の地名が出てこなくて、近未来の話みたいになっていたけど、あれは意図してそうしたの?

工藤:そうです!

鈴木:工藤監督は自分の撮りたいものがすごくはっきりしている人だよね。それって、映画監督においてとても重要なことで、そこがぶれてしまっている監督だとみんなが道に迷い出してしまうという最悪な状態になっちゃう。自分が監督をする時に一番大事にしているところって、どこなの?

工藤:俳優さんの芝居で言うと、目線でしょうか。いつ目線を送るか、どこで目線を逸らすか、みたいな。どこから目線を逸らすか。この映画だと、例えばバックミラー越しに見る時の目線とか、直接交わらない目線の行方とかですね。逆に私も鈴木監督がどんなところにこだわるのかを知りたいです。

鈴木:俳優さんの声とか呼吸を聴きます。よく聴くことによって、俳優さんがどう芝居をするかが分かってくるから。映画『嵐電』は井浦新さんが主演ですが、僕は彼の声がすごく好きで。今回はおっさんっぽく演じてもらっています。いつもは、幻みたいな儚い面持ちを宿した芝居で、いくつもの作品でドキッとさせて来ている。彼のスゴさのひとつはそこだと思っているんですが、今回、「え!」っていう位この映画では「おっさん」だった。それもまたスゴい俳優さんだと発見があったんですよ。

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先輩監督から後輩監督へのアドバイス

工藤監督をご自身のカメラで撮影しながら取材に応じる鈴木監督

 役者として活躍する傍ら、監督としても様々な作品を作り上げてきた鈴木監督。「僕自身、『オーファンズ・ブルース』が好きで、これからが楽しみだ」と生徒の活躍をうれしそうに話す中、先輩監督として工藤監督にアドバイスするとしたら?

工藤:最後に聞きたいんですが、いつも監督が心にとどめている監督としての心得のようなものがあったら教えてください。

鈴木:特にないよ。僕もジェダイ・マスターじゃないからね。だって、PFFのグランプリを取ったんだから自信を持って頑張ってほしい。本当に何もないんだけど、若いときってその瞬間でしか撮れない作品があると思う。だから、外に行っていろんな人を見て、たくさんのことを吸収して、自分の中で作品に昇華していってもらいたい。僕はもう若い感覚では映画を撮れないから、僕が撮れないものを工藤監督が撮れるのはすごくうらやましいよ。

工藤:ありがとうございます。気をつけることはないですか?

鈴木:気をつけること!? 僕からのアドバイスなんて本当にいらないと思うよ。あ、でも監督ってさ、自分が撮っているものとは違う作品を撮りたくなる時があると思うんだよね。でもなかなか難しくて元に戻ってくる。例えば野球選手の素振りってすごくて、変えようと思ってもなかなか難しい。だから、例えば外からやってくる映画の企画は多様なものにどんどん挑戦して、自分が撮りたいものをブレながら探してね。あとは、締め切りをちゃんと守ってね。僕は締め切り守れないし、真似しちゃいけないよ。

工藤:気をつけます(笑)。でも自分でしかできないものを大切にこれから頑張っていこうと思います! またアドバイス宜しくお願いします。

 演出について語り出したら、いつまでも終わらなそうな二人。インタビューが終わっても、映画談義はまだまだ続いておりました。「いつかメジャーで撮る日が来て、もし50代くらいの役者を探すことになったら、僕のこと使ってね」と工藤監督に話す鈴木監督はとてもうれしそうで、工藤監督の未来に期待していることが伝わってきました。シネマトゥデイも工藤監督のこれからの活躍に期待していますよ!

映画『嵐電』は5月24日(金)よりテアトル新宿、京都シネマにて公開 他全国順次公開予定
映画『オーファンズ・ブルース』は5月31日(金)~6月6日(木)テアトル新宿にて公開 他全国順次公開予定

ぴあフィルムフェスティバル

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